Drive into Heaven or hell act.2(大学生Ver.)

 

「次車線変更、右」
「右折っスか……」
「――苦手なのは分かるけど、左折ばっかじゃ何処にも行けないよ」
「わか、分かってますけどっ」
「あ」
「うあ」
 結局車線を移れずに、直進してしまった。
 ――今日でもう三回目だ。いくらなんでもこれはないだろう……。
 俺は開いた地図で口元を隠して溜め息をついた。

「なんで免許取れたんだろうね」
「うっせーな、俺だってわかんねーよ」
「何か裏の攻略法でもあったのかな?」
 ベラベラ言う俺を睨みたくて仕方ないのだろう、ほんの一瞬だけ目線がこちらを向くが、運転中に余所見をする余裕が海堂にはなかった。すぐに例のきつい目が前方へとスライドする。
「なんだよ裏って」
 睨めない代わりに、俺の文句にさらに答える。
 しかし俺はその倍くらい言い返した。
「だってさ、右折もできないで免許が取れるわけないじゃない。卒業検定どうやって受かったの? 公道出ただろ? 勿論右折したよな?」
「うっせーってば! あん時はできたんだよっ! ……何故か」
 そりゃあ「何故か」だろうなあ、と俺は納得する。現に今、出来てない。

 海堂は運動神経は良い。反射神経も良い。咄嗟の判断力も集中力もある。
「なのにどうして……」
「しつこいな! 運動と運転は違うだろ、全然。機械を使うんだぞ」
「機械って……」
 そんなアナログ人間でもないくせに、何を言い出すんだこいつ。部屋にビデオもDVDもなんでも揃ってるのに。俺なんかこの間やっとDVDプレイヤを買ったばかりだというのに、中学生の頃から持っているのだ、このお坊ちゃまは。

「――ともかく、次こそは右折よろしく」
「わ、分かりました……」
「…………」
「…………」
「…………」
「あ」
「……かーいどうー……」
「――すんません」
 さて、俺たちは何処へ行くのだろうか……。


→ Where can we go?

 

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