Drive into Heaven or hell act.1(大学生Ver.)
彼の骨ばった手が、ハンドルを壊すんじゃないかと思うくらい強く握り締めている。
「平気か、海堂。運転変わろうか」
「変わったら、オレの練習になんないじゃないスか」
それはそうだけど、と呟いて、俺は居心地悪そうに助手席に座り直した。
免許の交付が昨日だった海堂。練習してみるかと持ちかけたのは俺だ。
ちょっと公道に出るのは早かったか、とさっそく俺は後悔していた。教習所で公道に出ているはずだが、そう言えば教習車には助手席にブレーキペダルがあったはずなのだ。危険な時に止められない。
いや、仮にも仮免本免共に一発合格で乗り越えた海堂だ、公道なんてたいした困難でもないだろう。だが、この緊張具合はなんなんだ、どうしてこんな強張ってハンドルを掴んでいるんだ。
「――先輩、ブツブツうるさい」
「あ、ごめん、聞こえてたか、声に出してたつもりないんだが」
「集中させろ」
ガタガタと大きい振動を起こしながら、俺の軽自動車が動き出した。――クラッチの上げすぎだ、海堂……。
折角バイトが休みで何処か遠出しようかと誘った時に、妙な提案なんかするんじゃなかった。こないだここで色々しでかしたみたいに、色っぽい展開を期待していたのに……。
大げさにフラフラする揺れを感じながら、不安を胸に、嵌めたシートベルトを確認した。
→ Where do we go?
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