ラーメン

 

「いらっしゃい、上がって」
「お邪魔します……」
「ごめんね、まだ昼飯食ってないんだ」
「いいっスよ食ってても」
「ごめんね、適当にくつろいでて」
「すんません」
「あ、お湯沸かしてる最中だから、勝手に飲み物冷蔵庫から持ってってくれるかな。なんでもいいよ」
「はい、失礼します」
「礼儀正しいなあ、わざわざ冷蔵庫開けるのにそんなん言わなくてもいいのに。癖?」
「どうでもいいだろ……あれ、昼飯ってインスタントラーメン……スか?」
「うん、結構美味い……。もしかして食べたことない?」
「ありません。だって身体に悪いんでしょう」
「確かに身体に悪いんだけどさあ……」

「……野菜入れろよ。卵とかないんスか?」
「えーめんどくさい……」
「変なもん作るときは余計な野菜ばっかいれるくせに不精してんじゃねえ」
「不精というか、作るのは趣味だしさ、趣味と普通の生活って切り離されると思うんだけども」
「何ブツブツ言ってんスか。ほら人参とかネギとかも入れろよ。切りますよ」
「う、うん」
「…………」
「…………」

「あのさ」
「何スか」
「料理上手な母親を持つと、子どもも何もしなくても料理が上手になるって言うよね。舌が肥えるから、自然に美味くなる方法が分かるって」
「知りません、料理したことないから」
「じゃあこの今ぶちこみ続けてる野菜たちはなんなのかな」
「腹に入れば同じなんだろ」
「……ええー」

「あ、セロリもある」
「待った! 待った海堂セロリはどうかと、ラーメンにセロリは!」
「もう入れました。だいたい、あの汁にも入ってんじゃねえか」
「入って……るけど」
「好き嫌いはよくねえ」
「……これはなんの復讐なんだ? 海堂……」
「意味わかんねえこと言ってねえで、ちゃんと食えよ。――煮えましたよ」
「…………いただきます」

 

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