こえ(R-18)

 

 実は、先輩の乱れた息が好きだったりする。
 あの程よく低い声が掠れてオレの名を呼んだり、小さく呻いたりするのを耳元で聞くと、どうしようもなく、疼く。
 だからその半面、先輩の声が大嫌いだ。
 たったそれだけで、オレを拘束するものとなるから。

 後ろから抱き込まれて、耳朶に直接吹き込まれるように、囁かれる。
「ごめん、もうちょっと足開いて」
 そう言いながら、オレの太腿を掴んで半ば強引に広げる。
 抵抗しようにもその声が許さない。
「ごめん」
 何度も謝りつつオレの中心を優しく撫でて、どろどろに溶かしていく。
「ごめんね」
 ぐちゅぐちゅと音が鳴るたびに脳味噌が痺れそうになり、また、
「ごめん」
 謝る声にもどうしようもなく眩暈がする。
 首筋にあたる眼鏡が、ひんやりと冷たい。
 反対に、先輩の吐息が熱い。
 喋らないで、謝らないでと懇願したいが、言えなかった。
 だって好きなんだ。
 その声が、吐息が、みんなみんな好きなんだ。

 それでも悔しいから、手を後ろに回して、先輩の昂ぶった熱を握りこんだ。
「――か、いどう……」
 切羽詰った声調を帯びる。また耳に乱れた熱い吐息。
 オレ自身がが、それに却って欲情してしまった。
 ……しまった、逆効果だ。
 自棄になったオレは、手の中の昂ぶりを柔らかくまさぐった。
「……ふ……、ん、」
 鼻を通る微かな喘ぎ。
 ゾクゾク鼓膜から背筋を震わすたまらない低音を聞きながら――どうして耳は手を使わないと塞げないんだろう、なって馬鹿馬鹿しいことを考えて気を散らした。

 

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